そっと水を与えるような愛もある、と ある人が言っていました。 本来形の持たない水が、この器に注がれることによって形を持ちます。 しかしそれは一瞬のこと、器に吸い込まれた水はもうここにはありません。 それは器の一部に、溶けるようにひとつになります。 これは愛のようだ、と思います。 満たされることばかりを考えると悲しいから 確かにそこにあったことを思い出して覗き込んでみてください。

そっと水を与えるような愛もある、と ある人が言っていました。 本来形の持たない水が、この器に注がれることによって形を持ちます。 しかしそれは一瞬のこと、器に吸い込まれた水はもうここにはありません。 それは器の一部に、溶けるようにひとつになります。 これは愛のようだ、と思います。 満たされることばかりを考えると悲しいから 確かにそこにあったことを思い出して覗き込んでみてください。

小雨舞う  重いまぶたの裏側で   ティダはカンカン  されど三角  波にさらわれ  にじむ天天   浮かぶは夏の思い出なりけり        焼きたての  麺麭をひとくち  陽だまりが  白い朝に寄り添う  ありがとう、とだけ  伝えたかった        「いい夜」をあつめて  ここにそっと閉じ込める   明けなくていいよ  もう誰も来ない  午前一時のバス停   私は、ある時、ある場所で、ある実を拾った。 あなたは、それを見て捨てろと言った。 私は捨てることができず、 こっそりとカバンにしまって持ち帰った。 あなたにとってのゴミは、 私にとっての思い出だった。 その実は何の実なのかもわからないままである。     

小雨舞う  重いまぶたの裏側で   ティダはカンカン  されど三角  波にさらわれ  にじむ天天   浮かぶは夏の思い出なりけり        焼きたての  麺麭をひとくち  陽だまりが  白い朝に寄り添う  ありがとう、とだけ  伝えたかった        「いい夜」をあつめて  ここにそっと閉じ込める   明けなくていいよ  もう誰も来ない  午前一時のバス停 私は、ある時、ある場所で、ある実を拾った。 あなたは、それを見て捨てろと言った。 私は捨てることができず、 こっそりとカバンにしまって持ち帰った。 あなたにとってのゴミは、 私にとっての思い出だった。 その実は何の実なのかもわからないままである。       

私が捨てられなかったもの。 友達が誕生日にくれたプレゼントの箱。 お気に入りの、破けてしまった服。 がんばって作った過ぎ去りし日のための資料。 使う前によごれてしまった紙皿。 もらったけれどきることのなかったTシャツ。 なんとなくもったいない気がしてとっておいてたものたち。 それらは固有の形態をとどめながらも、 全てがかたまりとなり、「実」となる。

私が捨てられなかったもの。 お気に入りの、破けてしまった服。 友達が誕生日にくれたプレゼントの箱。 使う前によごれてしまった紙皿。 がんばって作った過ぎ去りし日のための資料。 なんとなくもったいない気がしてとっておいてたものたち。 もらったけれどきることのなかったTシャツ。 全てがかたまりとなり、「実」となる。 それらは固有の形態をとどめながらも、 全てがかたまりとなり、「実」となる。

「なににでも見えるかたち」は


誰にとってのなににでもなれるのではないか。


わたしは作品を通して


そこに対峙する、


あなたの思い出の扉を開く。